夏の融点

かき氷は想像の三倍くらいの速さで溶ける。 いま、僕の目の前にはあんみつが、彼女の目の前にはかき氷がある。向かい側に座った彼女の、胸元のすこしひらいたワンピースが涼しげで素敵だ。さしせまった今夏の予定を話し合うためにここに来たから、スケジュー…

陸に帰る

短歌研究新人賞に落ちた連作です 陸に帰る 佐藤廉 アスファルト踏めば沈んでいきそうでこの夏は終わらない気がする 深海はとても遠いさ、行ったことないのになぜか匂いがわかる パラレルもパラソルもだいたい一緒 どこにいたって逃げたくなるよ 自動販売機が…

地球最後の夏

くしゃみが止まらなくなって、風邪を疑いつつティッシュペーパーに手を伸ばすと空き箱だった。なぜかその時急に煙草が吸いたくなって、どうせならどちらも済ませてしまおうと思い、煙草を手にとってスーパーを目指し外に出ることにした。時刻は深夜2時を回っ…

あえて抵抗しない

あえて抵抗しない。 これは曲がりなりにも21年間生きてみてわかったことだが、世の中は抵抗しても意味のないことがほとんどである。大体のことが、はじめからそうなるように決められているように思う。しかし適切な抵抗は、確実に必要である。 高校生のころ…